▽ドイツ法学界の権威ギールケをして「理解できない。」と嘆かせた信託法は、わが国においても最も難解な法律の一つとされ、学説が激しく対立していることは周知のとおりである。
しかも、不動産登記法は、大陸法の影響を受けた民法を基礎にしているため、英米法に由来する信託法とは必ずしもそぐわない面があり、このことも信託登記手続の理解を妨げる要因となっている。
▽信託に関する登記は、昭和58年にいわゆる「土地信託」が商品化されたことを契機に、特に都市部の登記所を中心に事件数が増加し、バブル崩壊後は、不良債権の処理に信託が多く利用され、より複雑な形態の登記が申請されている現状にある。このため、具体的な登記事件の処理に苦慮するケースが多々あり、登記実務家から信託に関する登記についての解説書が望まれていたところである。
▽本書は、こうした事情を背景に、最近の信託をめぐる学説・判例の動向や土地信託を中心とした営業信託の実務を踏まえ、今日的な信託に関する登記の解説を試みたものである。
まず信託総論において信託の制度と信託法の実体規定について概略的な説明をし、次いで信託各論では、営業信託や遺言信託の仕組みについて述べるとともに、社会的な関心が高まっている公益信託についても触れておいた。
信託登記手続総論及び信託登記手続各論では、具体的な登記手続はもちろんのこと、現時点で考えられる信託登記の問題点を出来る限り取り上げ、先例を始め、質疑応答から登記学会決議に至るまで資料的に価値があると思われるものについてはすべて紹介するよう心掛けた。 |